eスポーツは「教える」ものじゃない——オンラインフリースクールが本当に目指すもの
- 牧田康之
- 2025年10月24日
- 読了時間: 7分
更新日:2025年10月28日

eスポーツオンラインフリースクールへの誤解
最近、「eスポーツを取り入れたオンラインフリースクール」や「eスポーツフリースクール」が増えてきています。
不登校支援の新しい形として注目される一方で、
「ゲーム依存が進むのでは?」「子どもが成長しないのでは?」
と否定的な声も少なくありません。
でも、少し立ち止まって考えてみたいのです。
——本当に問題なのは、ゲームそのものなのでしょうか?
この記事では、eスポーツを活用したオンラインフリースクールが目指す本当の目的と、不登校・引きこもりの子どもたちへの支援の在り方について書いていきたいと思います。
「eスポーツを教える」のではなく、「eスポーツで伝える」

私たちがやろうとしているのは、eスポーツの技術を"教える"スクールではありません。
フォートナイトやApex Legendsの操作技術を教えることが目的ではなく、ゲームを"手段"として、子どもたちが人とつながり、社会と再び関われるようになることを目指しています。
eスポーツを通じて体験できること
オンラインフリースクールでのeスポーツ活動を通じて、子どもたちは以下のような経験ができます。
チーム戦でのコミュニケーション:相手の意見を聞き、自分の考えを伝える練習
目標設定とPDCAサイクル:KPIを立てて振り返り、改善する習慣
感情のコントロール:負けた時にどう切り替えるかを学ぶ
こうした経験は、学校教育でも社会でも大切な力。eスポーツを通して、生きる力の基礎を自然に学ぶことができるんです。
家から出られない子どもたちは、"逃げている"のではなく、"探している"

「家から出られない」「学校に行けない」——不登校や引きこもりの子どもたちが増えています。
でも彼らは"現実から逃げている"わけではありません。
安心できる場所を探しているんです。
見落とされがちな「身体的な理由」
実は、家から出られない子どもたちの中には、以下のような医学的な問題を抱えているケースも少なくありません。
起立性調節障害(OD)
慢性疲労症候群
成長期の体力不足
発達障害に伴う感覚過敏
こうした身体の問題は、本人の「やる気」や「甘え」とは無関係です。
その問題を解決している間、外とつながる場所があってもいいんじゃないでしょうか?
もし安心して外に出られるなら、オンラインフリースクールなんて必要ありません。現実には、外の世界に安全を感じられない子どもたち、または物理的に外に出ることが難しい子どもたちがいる。
だからこそ、まずはオンラインにひとつでいいから"安全地帯"をつくる。
体調を整えながら、少しずつ、人との関わりを取り戻していく。
その一歩のきっかけとして、eスポーツがあってもいいと思っています。
ゲーム依存のリスクは"使い方"で変わる

確かに、ゲーム依存やゲーム障害のリスクはあります。しかし、eスポーツをオンラインフリースクールで構造化して使えば話はまったく違ってくるはずです。
研究データが示すeスポーツの教育効果
米国の教育機関での研究では、以下のような効果が報告されています。
学校でeスポーツを導入した生徒の出席率・関与が改善
チーム活動を通じて社会的スキルが向上
集中力と**実行機能(executive function)**の改善
問題解決能力の発達
逆に、監督も目的もない"やりっぱなし"の状態では、単なる時間浪費になるリスクもある。
だからこそ、「誰と・どんな目的で」関わるかが大切なんです。eスポーツは、使い方次第で"孤立"にも"成長"にもなり得るツールです。
学校では教えてくれない「社会で役立つ力」が身につく

eスポーツを通じた教育活動で、子どもたちは自然に次のような力を身につけます。
身につく5つのスキル
目標設定とPDCAサイクル - KPIを立て、振り返り、次に活かす力
チームワークとリーダーシップ - 役割を理解し、協力する力
状況判断と意思決定 - 変化に対応する柔軟性
コミュニケーション能力 - 相手を尊重しながら意見を伝える力
感情のセルフコントロール - 勝ち負けから学ぶ自己管理能力
これらは、就職活動や社会に出てからも役立つソフトスキルです。
つまり、eスポーツを「学びの教材」に変えることができるのです。
なぜ「ただのゲーム」では子どもは成長しないのか

ここで、とても大切なことをお伝えしなければなりません。
「ただゲームをやらせるだけ」では、子どもは成長しません。
むしろ、何の構造も目的もなくゲームだけをやらせ続けると、リアルな人間関係から遠ざかり、コミュニケーション能力が育たない——そんなリスクさえあります。
問題は「ゲーム」ではなく「環境設計」
でも、それは「eスポーツが悪い」のではなく、
「オンラインフリースクールでの使い方」の問題なんです。
サッカーだって、ただボールを蹴らせるだけでは成長しません。
コーチがいて、チームがあって、目標があって、振り返りがあるから、子どもは育つ。
eスポーツも、まったく同じです。
「リアルに接続できない」子を、どう支えるか
「eスポーツ漬けにすると、リアルに接続しなくなる」
——確かに、そういうケースはあります。
でも、よく考えてみてください。
最初からリアルに接続できていたら、オンラインに居続ける必要はないんです。
学校で傷つき、人間関係に疲れ、身体的にも外に出られない——そんな子どもたちにとって、オンラインは「逃げ場」ではなく「唯一の居場所」。
その居場所を否定して取り上げるのではなく、そこで安全に人と関わる練習をする場所に変える。それが、私たちの役割です。
実際にあった変化の例
実際に、引きこもりだった不登校の子どもが、ゲームを通じて友達ができ、それが外出につながったケースがあります。
オンラインで安心して関われる仲間ができると、「会ってみたい」という気持ちが自然に生まれる。最初は画面越しだったコミュニケーションが、やがてリアルな関係性へと広がっていく。
これは「ゲームが現実逃避の道具」という見方とは、まったく逆の結果です。
適切な環境と伴走者がいれば、eスポーツは**孤立から社会への「橋渡し」になり得るのです。
「わがまま」と「安全欲求」を混同しない
「ゲームばかりして、イヤなことはやらない。わがまま放題になる」
——そんな声も聞きます。
でも、本当にそれは「わがまま」でしょうか?
トラウマ、失敗体験、発達特性、身体的な不調
——そういった背景を抱えた子どもたちにとって、「イヤなこと」は私たちが思う以上に深刻な苦痛だったりします。
「本気になれば頑張れる」という精神論では、何も解決しません。
必要なのは、安全な場所で、小さな成功体験を積み重ねること。そして、少しずつ「できること」を増やしていくこと。
だからこそ、eスポーツには構造・目的・伴走者が必要なんです。
問題は「ゲーム」ではなく、「大人の知識不足」

実際のところ、インターネットやSNSを見ていると感じるのは
——ネットリテラシーやデジタルリテラシーの低い大人が多すぎるという現実です。
知らないものを「危険」と決めつける。
理解しようとせずに「否定」から入る。
その姿勢こそが、今の子どもたちを苦しめているのではないでしょうか。
大人が変われば、子どもの未来も変わる
「ゲームを取り上げる」よりも、「安全に使えるよう導く」ことが、いま本当に必要な支援です。
大人が学び、変わることで、子どもたちの未来は変わります。
eスポーツは居場所づくりの手段

私たちが考えているオンラインフリースクールは、
eスポーツを教える場所ではありません。
でも、eスポーツを"使って"子どもたちが人とつながり、社会を知るきっかけをつくります。
不登校や引きこもりの子どもたちはゲームに逃げているのではなく、居場所を探している。
だからこそ、私たち大人が"見守る"だけでなく、
"伴走する"存在にならなければなりません。
eスポーツは目的ではなく、手段。
「ゲームから始まる再出発」が、子どもたちの未来を変えるかもしれません。



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